生涯活躍のまち(日本版CCRC)⑦2019年3月時点の現状
今回は、生涯活躍のまち(日本版CCRC)シリーズの最終回。
まだ現在進行形ですが、2019年3月時点の現状について。
これまで言及しているとおり、北九州市版生涯活躍のまちは、市全体と6つのモデルエリアという二本立て。
市全体のほうは、移住政策のところで言及しているので、ここでは省略。
6つのモデルエリアのほうは・・・というと、
なかなか一朝一夕には進まないというのが正直なところ。
6つのエリアの中で最も先行しているのが、社会福祉法人もやい聖友会が手掛ける洞南地区の「ど~なん縁が輪コミュニティ」。
中核施設は「銀杏庵穴生倶楽部」という特別養護老人ホーム(以後、特養)となる。
一般的に「特養」と言うと、「暗くて静か」「来訪者は近親者のみで閑散としている」というイメージだが、ここはそうした固定観念をいい意味で覆してくれる。
端的に言うと、とても明るくて活気があって、およそ特養とは思えないのだ。
まず、施設に入ると目に飛び込んでくるのは、開放的で明るいコミュニティカフェ。
「カフェ」なので、一般の方々もフツーに利用されている。
ちょっとしたステージも兼ね備えており、ピアノも常設。
子どもたちのピアノ発表会などにも使われているそうだ。
このカフェの脇には、なんと「コミュニティFM」が!
理事長のこだわりでFMスタジオが完備され、地域の情報発信に一役買っている。
それと同時に、収録のたびに様々な方々が施設を訪れるということも重要。
この施設の取組みが自然な形で伝わり、それが更なる拡がりをもたらしているようだ。
最上階にある多目的スペースや会議室は、日常的に地域の皆さんに貸し出しが行われている。利用料も市内にある市民センターと同額にしているとのこと。
市民センターは原則として「経済活動の用に供してはならない」「アルコールは禁止」といった制約があるため、利用者団体にも喜ばれているようだ。夕方には学習塾としても使われているため、子ども達が自然な形で施設を利用する仕組みが出来ている。
この施設を切り盛りするのは、理事長の権頭喜美恵さん。
一言で言うと、非常に行動的で「地域」のことを一生懸命お考えになる方。
本当にスゴイと思うし、頭が下がる思いです。
この施設のコンセプトについて、権頭理事長からお聞きした言葉が印象的でした。
「特別養護老人ホームに入居される方は、体が不自由な方、認知機能が低下した方が多く、元気な時のように外に出ることが出来ない。でも、地域の住民であることには変わりはない。だったら、地域の皆さんが自然な形で外から来てもらう仕組みを作ればいい。いや、施設を出来る限り開放し、施設を利用してもらうことで、入居者も元気になる、地域とのつながりも深まるではないか、と。」
素晴らしいコンセプトですが、ここまでの道のりは平たんではなかったと思います。
いまでは小規模保育事業も営んでいるため、保育所の園児が毎日のように施設を訪れるようになり、施設はさらに笑顔で溢れています。
次に、小倉南区守恒地区に「ゆうゆう壱番館」という住宅型有料老人ホームがあり、ここも生涯活躍のまちに向けた取組みを進めています。
というより、この施設は30年という歴史を誇る老舗的な存在。
オープン当初は、当然ながら老人ホームという概念はなく、「シニアのハッピーリタイア」を標榜して造られたとのこと。
現在は賃貸形式が主流となっており、約100世帯が暮らしている。
この施設は「生涯活躍のまち」が議論される前から「住民開放」「地域とともに歩む」をモットーとしている。毎月開催しているロビーコンサートは地域の皆さんが楽しみにしているし、施設内のカルチャールームで行われている各種の教室も誰でも参加できるようになっている。テニスコートも1面完備されており、地域の皆さんに利用されている。
4月からは多目的ルームがオープンし、さらに地域との共生に向けた取組みが加速することになりそうだ。
ほかの4つのエリアでも、そのエリアの資源をどのように生かしていくのか、どのような「生涯活躍のまち」を目指すのか、模索が続いている。
まずは出来るところから一歩ずつ。
昨日より、今日よりも少しずつ良い社会をつくっていく取組みを目指していきたい。